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床上浸水と障子──災害に晒された和建具の再生と可能性

    近年、台風や集中豪雨による床上浸水の被害が全国各地で頻発している。特に河川沿いや低地に位置する住宅では、数十センチから数メートルの浸水が発生し、家財や建具が水に浸かる事態が後を絶たない。こうした災害の中で、私たちの暮らしに根付いた「障子」という伝統建具は、どのような影響を受け、どのように再生できるのだろうか。

    障子は、和室の象徴であり、光を柔らかく取り入れ、空間を仕切る役割を果たしてきた。だがその構造は、木枠と和紙という極めて繊細な素材で構成されており、水に対しては非常に脆弱だ。床上浸水が発生した際、障子はどのようなダメージを受け、どのような対応が求められるのか。この記事では、災害と障子の関係を掘り下げ、再生・活用の可能性についても考察する。

    浸水による障子の被害

    床上浸水が発生すると、障子は以下のような被害を受ける。

    • 和紙の破損・変色:水を吸った障子紙は繊維が緩み、破れやすくなる。乾燥後もシミや変色が残り、美観を損なう。
    • 木枠の変形・カビ発生:障子の木枠は杉や桐などの柔らかい木材が使われることが多く、水分を吸収すると膨張・変形しやすい。さらに、乾燥が不十分だとカビが発生し、健康被害の原因にもなる。
    • 接合部の緩み・構造不安定化:障子は釘を使わずに組まれていることが多く、水分によって接合部が緩み、開閉が困難になるケースもある。

    災害後の障子の再生と活用

    障子が浸水被害を受けた場合、以下のような再生・活用方法が考えられる。

    1. 木枠の乾燥と再研磨

    浸水後すぐに木枠を分解し、風通しの良い場所で乾燥させることが重要。完全に乾いた後、サンドペーパーで表面を研磨することで、カビや汚れを除去できる。変形が軽度であれば、再組み立ても可能だ。

    2. 障子紙の張り替え

    障子紙は比較的安価で、DIYでも張り替えが可能。災害後の再生プロセスとして、家族や地域での張り替えワークショップを行うことで、コミュニティの再生にもつながる。

    3. 防水・防カビ処理の導入

    再生した障子に対して、ホウ酸水溶液などの天然防カビ剤を塗布することで、次回の災害時に備えることができる。木材の防腐処理は、障子の寿命を延ばすだけでなく、健康被害の予防にも寄与する。

    4. アート・什器としての再活用

    破損した障子をそのまま廃棄するのではなく、撮影用背景やイベント什器、アート作品の素材として再活用する事例も増えている。特に、和紙の破れや木枠の歪みを「味」として捉えることで、新たな価値が生まれる。

    障子が持つ「再生」の象徴性

    障子は、光を通しながら空間を仕切るという、日本独自の美意識を体現した建具だ。その繊細さゆえに災害には弱いが、再生可能な構造と素材を持つ点で、持続可能な暮らしの象徴とも言える。

    災害後の暮らしにおいて、障子を再生するという行為は、単なる修復ではなく、心の復興にもつながる。家族で障子を張り替える時間、地域で障子を再活用するイベント──それらは、失われた日常を取り戻すための小さな一歩となる。

    おわりに

    床上浸水という災害は、私たちの暮らしに深刻な影響を与える。しかし、その中で障子という伝統建具が果たす役割は、単なる空間の仕切りを超えている。再生可能な素材としての価値、コミュニティ再生のきっかけ、そして日本文化の象徴としての存在感。

    和建具を扱う事業者にとって、災害と障子の関係を見つめ直すことは、商品開発やコンテンツ設計にも新たな視点をもたらすはずだ。

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